SRAMアジアの中の人にスラムコンポの凄さについて直接聞いてみた。AXSとか12速とか

2019年10月22日
こんにちは!所沢店の宮﨑&相田です。先日、コンポメーカーの「SRAM」のマーケットマネージャーアジアのIan Wang氏が所沢店に足を運んでくださいました。いまやマウテンバイクのコンポといえばSRAMというほどに存在感をみせていて、さらに3年ほど前からロードバイクコンポに無線電動eTapを発売するなど、前衛的なブランドとしてのイメージがますます強くなっています。 今回、お話を聞いたらSRAMのコンポを使ってみたい欲求があふれてしまって困っています。せっかくなのでSRAMについて記事にしてみましたのでぜひご覧ください!

SRAM(スラム)って?

トレックのエクスキャリバー8にはスラムのパーツがついていますSRAM(スラム)はアメリカのイリノイ州で1987年に創業したパーツメーカー。クロスバイクやマウテンバイクで使用されている「グリップシフト」というレバーを最初につくったのがSRAMです。 オートバイのようにグリップを握った状態で回して変速させるような仕組みで、当時、ダウンチューブについている変速レバーを動かすためには乗車中にハンドルから手を離さなければなりませんでした。グリップシフトはその問題を解決する画期的なもので今でもグリップシフトが付いている自転車は軽快車などでも少なくありません。 主にマウンテンバイクのコンポに力を入れてきて、現在MTBのコンポのハイエンドモデルを製造するメーカーとしてシマノを抜く勢いでシェアを拡大しています。日本だと実感しにくいですが、いま世界的には自転車の販売の比率はロードバイク:マウテンバイク=4:6なんだそうです。そのなかで大きなシェアを持っていることがまずスゴイですよね。 実際に私たちの取り扱っているTREKのマウテンバイクでもSRAMのコンポを搭載したモデルは多々あります。トレイル入門で人気のハードテイル「X-calibar8」、サスペンション付きクロスバイク「Dual Sports4」など手頃な価格帯のものから、プロジェクトワンに対応したTopFuel、FuelEXなどでも選択することができます。 トップフューエルのXXX1AXSのカセットスプロケット付近を撮影した画像

SRAMといえば「軽量」

マウンテンバイクのシェア拡大と合わせて、ロードバイクコンポへ参入し、シマノ、カンパニョーロに並ぶ、3大メーカーにまで成長してきました。SRAMのコンポーネントで真っ先に思いうかぶ特徴が「軽量」。 以前、私がリムブレーキタイプでデュラエースのDi2とSRAM RED eTapでどれくらい重量が変わるのかを調べた際のノートには「フルセットで比較するとR9150シリーズより98g軽くなる」と書いてありました。 スラムレッドetapアクセスがついたドマーネSLR9のクランク周りせっかくコンポを変えるならばできるだけ軽いものがいいと考える方も多いものですし、ヒルクライムでも軽量化は大事です。そして軽量ゆえに無駄がないからこそ、シンプルでカッコいいデザインにもなっている。 フロントの2枚のチェーンリングやカセットスプロケット(すべての歯ではないですけれど)が1枚1枚別成形しているのではなくて、金属の塊から一遍に削り出していると聞くだけで、なんかすごいカッコいいものに思えてきます。(実際カッコいいんですけど!)そういう目線でパーツを見ると、ますます引き込まれてしまいます。

SRAMといえば「ダブルタップ」

スラムのシフトレバー部分を拡大した撮影した写真SRAMは変速方式にダブルタップを採用。シマノのSTIレバーとカンパニョーロのエルゴパワーは変速する際のレバーが左右に2つずつ付いていて、どちらを押すかでアップかダウンに変速します。 これをシンプルに左右1つのレバーでアップもダウンもさせてしまおうぜというのがSRAMのダブルタップです。浅く押すとリアはシフトアップ、深く押し込むとシフトダウンします。どちらを押すかではなくて、どれだけ押すかなので、操作ミスをしにくいという利点があります。 またレバーが1つのため、レバー自体がコンパクトでブラケットも細身、だから手の小さい方や女性の方からも操作がしやすいと人気が高いんです。

シンプルで迷わない操作を追求して…

こうした工夫は、ライド中に気にする部分を少なくして、路面やコースなど周囲の状況に最大限気を配れるように、操作をシンプルにしているんだと思います。それが、マウンテンバイクのフロント1速×リア12速のワイドギアの開発につながっていると思います。 チェーンが落ちる心配があるなら、いっそのことフロントの変速をなくして代わりにリアを多段化して、重たいギアから軽いギアまでワイドレシオにすればいい、っていう。いろいろ突き詰めていったら、ユーザーにも喜ばれて、意味のある12速化を果たしたのがSRAMなんだと思いました。

2016年のワイヤレス電動コンポeTap登場のインパクト

2016年の電動コンポSRAM RED eTapの登場は、ロードバイク業界に衝撃を与えました。電動コンポはシマノのアルテグラやデュラエースDi2、カンパニョーロのEPSがずでに存在していましたが、コードでレバーやディレーラーをつなぐ方式をとっています。 SRAMが革新的なのは、eTapは無線接続だということ。だから取付も設定も簡単!レバー部分はボタン電池で、フロントディレーラーとリアディレーラーは取り外し式の充電電池を使っているので、充電の場所に気をつかわずに済みます。そして軽量。なんでも無線通信のこの時代でも他のwifiの影響を受けにくいeTap独自の無線帯域の暗号通信方式で行っているので混線することもありません。 SRAM Red eTapが出たばかりの頃、取付や使用感を紹介した記事がコチラ↓↓ そして今年2019年にさらなる進化をとげたSRAM RED eTap AXSが登場しました。リア変速が12速化したこと、フロント・リアともに新たな歯数構成になったこと、新規格のクランクスピンドルなど、大幅にバージョンアップしました。その概要は下記のリンク記事で紹介しているので確認していただくとして、今回Ian氏からお話を伺ったなかで印象的だった部分を紹介したいと思います。

SRAMのAXS(アクセス)の進化がすごい

「X-RANGE」で意味のある12速化

構成歯数を見直した新しいREDクランクただ単に多段化するのではなくて、多段化した分しっかりギアの選択肢を広げているのがAXSの「X-RANGE」ギアリングです。アドベンチャー・グラベルライドなどホビーユーザーの楽しみ方が多様化している時代に合わせて、クランクのチェーンリングの歯数の選択肢は以下の3つ。 ・50-37T ・48-35T ・46-33T どのクランクも大小のチェーンリングの歯数差が13Tなのもポイント。いま多くのクランクで採用されているコンパクト50-34Tは歯数差が16です。歯数差を統一しておけばフロントディレーラーも1つですべてのクランクに対応できるし、歯数差が少なければ少ないほどチェーンの動きも少なくなってスムーズな変速につながっていきます。 スラムのREDのカセットを裏から見た写真そしてカセットスプロケットの選択肢は以下の3つ。 ・10-26T(10-11-12-13-14-15-16-17-19-21-23-26) ・10-28T(10-11-12-13-14-15-16-17-19-21-24-28) ・10-33T(10-11-12-13-14-15-17-19-21-24-28-33) 注目したいのが(赤いラインの部分)、トップかミドル域にかけての1つ飛びになっている部分の多さです。たとえば完成車にもよくある11速カセットスプロケットの11-28Tのギア構成は11-12-13-14-15-17-19-21-23-25-28。1つとびは11~15までの連続で5枚分ですが、12速のAXSの場合だと10-28の組み合わせでも1つとびは10~17までの連続8つ分!脚の負担も抑えて、変速も歯数差が少ない分スムーズな変速が可能になります。

さらにトップが10Tになったことでこれまで以上に幅のあるギア比に

3つのチェーンリングと3つのカセットスプロケットの計9通りの組み合わせから選ぶことができるわけです。カセットスプロケットが3種類しかない。そしてリアディレーラーも1つですべての組み合わせに対応します。 シマノのようにSSかGSかという具合にカセットの歯数に合わせてリアディレーラーのプーリーゲージの長さを変える必要もありません。選ぶ必要がない、無駄がない、なんかシンプルですよね。

一体どの組み合わせを選べばいいのか?

xrangeのギア比の幅広さを説明したグラフ 展示会でいただいた資料より抜粋
フロントチェーンリング50‐37はプロ仕様のギア比だそうです。普段52-36Tクランク×11-28Tカセットを使用している場合だと、X-Rangeでは48/35Tクランク×10‐28Tカセットを選択、普段50-34Tのコンパクトクランク×11‐32Tカセットを使用している場合はX-Rangeでは46/33Tクランク×10-33Tカセットを選択するとギア比の幅も広がってトップからミドルの間隔も密になります。 感覚的にはフロントチェーンリングが48Tとか46Tと聞くとすごく小さすぎない?というような気になりますが、実際リアに10Tがあることでギア比の幅が広がっているんですよね。重い方も軽い方も拡充して、変速も歯数差が少ないからスムーズになるという、これを進化と言わずしてなんと言うのでしょうか! ここからは個人的な話になりますが、私もプロジェクトワンを検討したときに今まで使ってきたシマノのDi2コンポにするか、SRAMのeTap AXSにするか悩んだ際に、ギア比の計算をしてみました。 現在、クランクが50-34T、リアが11-28Tですが、もう少し軽いギアが欲しいと思っていて、私の走り方ではギア比2.0~3.0くらいの間をよく使っているような感覚なのでその部分を充実させたいと思ったときに、たどりついた結論が、SRAMのeTAP AXSだったらクランクを46-33Tにして、カセットを10-33Tにするというものだったを思い出しました。 アウタートップはほとんど使いませんが、それも今までより重たいギアになって、リアも一番軽いものでギア比1.0で坂道も登れそう、そしてカセットも1つとびの歯が6連続に増えるから、ちょうどいいギアが見つかるかもという期待も重なりました。 残念ながらフレームサイズの都合でSRAM eTAP AXSの夢は降り出しに戻りましたが、お話を聞いてすとんと通じるものがあってコンポ乗せ換えを検討中です。

ハードでなくてソフトのアップデートが肝心!eTAPはアプリも充実

SRAMのetapの各種設定ができるアプリについて話をするIan氏eTapはアプリも日進月歩で進化しています。専用のアプリを使用すれば、シフトレバーのどの操作でどこが動くかを決められたり、Enhanced Modeといってフロントディレーラーの動きに合わせてリアディレーラーが1~2コグ自動シフトたり、逆にリアディレーラーの動きに応じて、フロントディレーラーが自動判断で最適なギア比にシフトしてケイデンスの安定化を図るモードもあります。 設定自体はアプリで行いますが、モードの切り替えはレバーでも行えるので走行中での操作が可能です。ソフト側はこの先アップデートしてさらに使いやすくなっていくと思うとこの先何が起こるのか楽しみになりますねぇ。 以前のeTapは右ボタンでシフトアップ、左ボタンでシフトダウン、左右同時に押すとフロント変速だったのが随分とソフトが進化していて驚きましたEnhanced Modeを使えばリアディレーラーだけの操作をしていればいいので、さらに操作がシンプルになりますよね。いいなぁ。

ロードコンポもMTBコンポもAXSであればミックスして使える!

ちなみにAXS同士であれば、ロード用のコンポーネントもMTB用のコンポーネントも互換性があります。車種をまたいだコンポの組み合わせはこれまで互換性はないのが暗黙の了解でした。 互換性はないけれどもギア比の構成欲しさにマウテンバイクにロード用コンポを無理やりつけて動かしていたという時代もありましたが、SRAMはこの課題をなんとクリアしてきました。Rockshoxから発売のドロッパーシートポスト「Reverb AXS」の操作もできるそうです。 たとえばグラベルロードに、MTB用のSRAM Eagle AXSのワイドレシオをつけて、ドロップハンドルにRED eTap AXSをつけてというミックスコンポも可能なんです。組み合わせ次第では見たこともない自転車ができそう!

DOTオイルを使うワケ

話を聞いていて、SRAMのすべての製品がどんな自転車でも取り付けできるようにというメーカーの信念を感じました。と同時に、さまざまな規格が乱立する中で共通のものを作ろう、使おうというところも伝わってきました。 スラムの油圧ディスクブレーキの取付部分を拡大して撮影たとえばそのひとつに油圧ディスクブレーキに使っているオイルが挙げられます。メーカーによって使用しているオイルは異なり、SRAMはDOTオイルを使用しています。DOTオイルは沸点が高く、ブレーキング時の熱の発生で制動力が左右されないとう特徴がある反面、攻撃力が高くて塗装などに気を遣う、吸湿性が高いなどの一面もあって私たちからすると、鉱物ベースのミネラルオイルよりも扱いにくいという印象だったんです。 でも、ミネラルオイルもDOTオイルもメーカー推奨は1年に1回の交換で頻度は変わらないわけですし、何よりDOTオイルはバイクや車など他の乗り物にも使用される世界共通の配合なんだと。つまり、使用実績があるし、入手もしやすい。ミネラルオイルは各社で配合を変えていることもあり、明確な基準があるのかどうか言われてみると確かに分からない。(実際にシマノコンポを使っていて大きなトラブルは今のところないんですけれどね。) 「DOTオイルそのものは腐食性が高いけれども、水でその性質は無害なものになるんだから、水をかければいいだけなんて単純でしょう」と言われるとその通りな気もしてきます。汎用性の高いものを使う、そういうのがSRAM根底にあるのをここでも感じます。

新しいDUB規格でより剛性が高く軽量に

DUBという新規格を採用したクランクまた、AXSになってからDUBという新規格を採用しています。いままではGXPという24mmクランクスピンドルを採用していたものを、スピンドル径を28.99mmと大径化。今後はDUB規格にシフトしていくそうです。 24mmで剛性を高くするには重さとの兼ね合いもあって限界がある、ならば大径化して軽さと剛性を両立しようと28.99mmに統一。それに合ったBBも販売されていて、ねじ切りタイプ、プレスフィット、BB30用など様々なフレームに対応しています。 ちなみに2019年現在、TREKのロードバイクEmondaシリーズMadoneシリーズのBBは「BB90」のためDUB規格には対応しておらずクランクはGXPタイプを選択する必要があります。第3世代の新型DomaneシリーズのBBはT47を採用しているためDUB規格に対応したBBの装着が可能です。DUB規格ができたことで今後のフレーム規格も変わっていきそうな予感がしてきます。

MTBのディレーラーハンガーを統一した動きも

つい先日、SRAMは「ユニバーサルディレーラーハンガー」の発売を発表しました。ディレーラーハンガーは曲がりや折れなどトラブルの多い場所ではありますが、フレームメーカーによって、さらには車種によって異なる形状をしているため持ち込み先のショップでは手に入らない場合があります。 互換性がないからこそ何かあったときにどうにもできないパーツの一つなんです。ユニバーサルディレーラーハンガーはマウテンバイクのディレーラーハンガーをメーカーの垣根を越えて統一する画期的な試みです。世界共通っていう、目指すところの高さにビックリしました。

「いろいろ統一してシンプルに」いう姿勢が面白くて応援したくなりました

共通規格とはいっても、AXSは12速でチェーンは片側フラットな独自形状のものを使用していますし、11速化から12速化をする際にはカセットスプロケットの取り付け様式も異なるためXDRドライブ用フリーボディへの交換が必要です。 ボントレガーのホイールで言えば、DT Swissのハブを使用しているホイールの場合は交換が可能です。(プロジェクトワンでSRAM RED eTapを選択する場合には、フリーボディもSRAM用を選択できます)。
スラムのIan氏と一緒に記念撮影 スラムのアジア地域マネージャーのIan氏と一緒に記念撮影しました
正直なところいろんなメーカーがあって、それぞれ開発をして競い合っているなかでさまざまな規格があるのは当然で、混在しすぎていて統一は難しいと思います。でもSRAMの目指しているものの壮大さに心打たれたのは事実でとても応援したくなりました。 シマノのコンポと比較しても価格はお高めですが、それでもSRAM選ぶ理由があります。残念ながら日本では完成車でSRAMがついてくるものは少ないです。だからコンポのアップグレードでもまずはシマノからという方も多いですが、SRAM気になってきませんか?私はお話を聞いてすっかり欲しくなってしまいました!あとは算段のみ…

所沢店の中の様子をガラス越しに撮影した写真

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