チェーンの伸びが引き起こすトラブルとチェーン交換時期・伸び計測方法
チェーンの伸びの正体
自転車の整備などで、チェーンが伸びてますね。とよく耳にしますが、チェーンの伸びって実際どんな現象なんでしょう?イメージするのは、チェーンの金属部分が引っ張られて延びるイメージ。でも、自転車のチェーンの素材は、人間の力で引き延ばせるほど柔らかい金属ではないんです。
それではなぜ全長が長くなってしまうのか? それは、チェーンのプレートとプレート繋いでる丸いリンクの周りが削れていくことが原因なんです。チェーンが伸びると、チェーンのリンクに小さな隙間ができ、チェーンの長さが伸び、さらに、横方向の硬さが柔らかくなります。力をしっかり伝えて、変速性能を維持する為には、チェーンのメンテナンスと適度な交換が必要です。
チェーンが伸びたからと言ってチェーンの長さを一コマつめればいいという話ではありません。
チェーンが変速性能に及ぼす影響
チェーンが伸びる(リンクにガタが増えると)と、変速性能に悪い影響が出てきます。スポーツバイクについている外装変速と言われるものは、写真の通り、横のギアにチェーンを動かすために、変速器が脱線させているんですね。その時に、チェーンは大きく引っ張られて(押し込まれて)変速します。
この時、チェーンが延びていると横の動きが柔らかくなって、隣のギアに移るのに、いつも以上に引っ張らなければいけなくなります。そうすると、今まで動いていたのに、動きが悪くなったりするんですね。
ディレイラーは、英語のディレイルメントからきており、意味は脱線です。横方向の固さを復活させるには、チェーンを新しくするしかありません。
写真で比較! 伸びたチェーンと新品のチェーンの横のしなり具合
新品チェーンと伸びきったチェーンの2種類を用意して、横方向に限界までしならせてみました。写真で見ると一発でわかりますが、ご説明した通りチェーンが伸びるとこのように横方向に柔らかくなります。
同じスタート地点からしならせてもこんなに違いが出るんです。延びきって柔らかくなったチェーンだと変速しようとしてもうまくいきません。スムーズに元の段から隣の段に脱線を完了できないのです。
チェーンは、切れる前に寿命が来ることがほとんどです。前に進んでいるからといっても、自転車の性能に大きく影響を及ぼしてるんですね。錆びたり、切れたりしたら交換が必要ですが、見た目問題なくても、変速性能に影響を及ぼすほどの伸びは速やかに交換するのがオススメです。
交換目安については後述します。
チェーンが力の伝達性能に及ぼす影響
写真のようにチェーンは、プレートとリンク部分で構成されていて、これが何と100個以上もついているんですね(長さにも寄りますが)。力が加わると、チェーン全体の3分の1ほどのチェーンに力が加わります。つまり30から40個のリンクに力が伝わるんですね。
という事は、ペダルに力を入れた瞬間、チェーンのリンクの遊びが大きければ大きいほど力が伝達するまでの時間がかかり、遊びが大きいほど、余分な動きをしなければいけないので力のロスも大きくなります。この状態も、長さを短くしたからといって、解決する事ではないのです。
伸びたチェーンはギア歯の磨耗を加速させる厄介者
さらにさらに、チェーンが伸びた状態で乗り続けると、チェーンの一コマ一コマの間隔と歯の山と山との間隔にずれが生じてしまい、噛み合わせが悪くなり歯の磨耗が促進されてしまいます。
特に、カセットスプロケットは歯の数が少なく、チェーンと接触する回数も多いので、ただでさえ摩耗の進行が早いのですが、伸びたチェーンを使いづづける事によって更に摩耗を加速させてしまう事になるんです。
カセットスプロケットの摩耗がひどくなると、『歯飛び』というチェーンが噛み合わず歯の上を滑るような症状が出ますし、フロントチェーンリングに関しては、変速の際に歯からチェーンが離れずに、そのままフレームに噛み込んじゃうことまで起こります。
定期的な点検と早めの交換がオススメです。
チェーンを長持ちさせる唯一の方法
チェーンのメンテナンスは、注油と掃除が基本チェーンの伸びは専用器具で計測可能
チェーンの伸び率を計測している様子
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