今さら聞けない!?意外と知らない?変速の基礎知識と上手なギア比の選び方

自転車を買うときに気になるスペックの一つがコンポのグレード。重量や操作性もさることながら、「段数の違いが、何やら重要そうな気がする」という方も多いのではないでしょうか。実際、ホームセンターや自転車屋さんのチラシなどでは「シマノ製24段変速」みたいな表記をよく目にします。

乗り始めてからは「段数の多さに惹かれて買ったのはいいけど、イマイチ使いこなせていない気がする」という声も聞こえてきます。「慣れれば無意識でも上手に使える」とベテランライダーは言うけれど、ちゃんと説明してくれる人に出会ったことがないなら、この記事を読んでみてください。簡単なことを難しく説明します(笑)。

前半で基礎知識、後半で上手な変速の仕方を紹介しますので、ちょっと長いですがお付き合いください。

そもそも変速って何?

(ドキッ。やめて、そんな質問)「いや〜、まあ、その…文字通り、速度が変わるってことだな、うん。」

辞書にもそう書いてあるから、間違っているとも言い難いのですが、どうもしっくりこない。ガシガシ漕いで加速していても、ギアを変えなければ「変速している」とは言わないし、ブレーキをかけて減速するときも、速度は変化するのに「変速している」とは言わないですもんね。どうやら「変速する」というのは「ギアを変える」ことだと言えそうです。

では、ギアを変えると何が変わるのか。自転車ではギアを変えると、ペダルを踏む足が一回転した時に、チェーンを介して回転する後ろの車輪の回転数が変わります。ロードバイクの場合、重たいギアでは足が一回転する間に車輪が約5回転もするのに、軽いギアでは足が一回転する間に車輪が1回転チョイしか回りません。つまり、変速することで、足の回転に対する「車輪の回転速度が変わる」ということが、お分かりいただけるかと思います。厳密に言えば、前と後ろの歯車で歯数(ギザギザの数)が違えば、足の回転と車輪の回転に差をつけることになるので、ギアが前後1枚ずつの場合も”変速している”のですが、通常は、その回転数の比率を複数選べる多段変速機構を変速機と呼び、変速機を操作することを「変速する」と言っています。

自転車の移動速度は、車輪の回転速度に比例するので「変速するとスピードが変わる」と言うのはあながち間違いではないのですが、実際には、ギアが重すぎて足の回転が遅くなってしまい、スピードに結びつかない、なんてこともありますよね。それを解決するためには、段数を多くするのが一つの手なんですが、ここからまだまだ奥が深いんですよね〜。

ギアの段数は多い方がいいの?

変速機なしより7段、7段より18段、18段より24段の方がなんとなく良さそうな響きですよね。段数が多い方が値段も高くて、よりスポーティーなイメージだったりしませんか?ひょっとしたら、段数が多い方が速いんじゃないか、という気すらしてきます。でもって、いざ24段変速の自転車を買おうとお店に行って、改めてギアの枚数を数えてみると全然24枚もついてない!チクショー、JAROに報告だ!と、ならないためにも、読み進めてください。

実は、自転車の変速段数は、前ギアの枚数と後ろギアの枚数を掛け合わせて表しているんです。例えば、前のギアが3枚で、後ろのギアが8枚だと3×8=24段となるわけです。まあ、そこまでは「実は」なんて勿体ぶる話でもないかもしれませんが、この先は意外とビミョーです。「24段と27段、どちらが上位モデルか?」と聞かれたら、無条件に27段と答えたくなりませんか?プロショップの店員でも、8割くらいはそう答えると思います。上位モデルほど段数が多いという頭があるからです(事実なんですけどね)。ところが、同じ人に「22段と27段。どちらが上位モデルか?」と聞くと、ちょっと悩むと思いますが、ほぼ全員が22段と答えると思います。24<27<22…あれ?! 算数弱めか?

7~12SPD

7速から12速のカセットスプロケット

実は(今度こそ)、スポーツバイクの後ろのギアは、総段数では語り尽くせないほど種類があるんです!なんと、7枚から12枚まで‼︎ これに前のギアが1〜3枚で掛け合わされると、もうカオス。そこで一般的になったのが、(前ギアの枚数)x(後ギアの枚数)で呼ぶスタイル。2×12、1×12、2×11、1×11、2×10、2×9、3×9…といった具合に、総段数表示に比べてどんな自転車なのか、実際のパーツ構成もイメージしやすくなります。そして、総段数ではわかりにくかったパーツのグレードも、後ろギアの段数に注目すると違いが見えてきます(ここは直感通り、枚数が多い方が上位グレード)。

モノの良し悪しの基準は人それぞれですが、前後ともギア1枚ずつで変速機なしの「シングルスピード」がサイコー!という人以外は、後ろのギア枚数は多ければ多いほど有利です!そのことを理解するために重要な、多段変速のギア比について、具体例をみながら説明してみたいと思います。

ギア比とは?

ここまではギア板の枚数について語ってきたわけですが、今度はギア1枚1枚についている歯の数に話が移っていきます。ギア比の話に入る前に、歯数についておさらいしておきましょう。

ギアについている歯の数を知るには、それぞれのギア板についている突起の数をぐるり1周数えるか(多いと大変!)、カタログなどで歯数の記載を探します(ギア板に小さな字で刻印されている場合もあります)。歯数は数字と単位Tで表すのが一般的で、例えばトレックのドマーネSL6というロードバイクの場合、前の大ギアの歯数は50Tです(Tは、歯を意味する英語の”tooth”から来ており、日本ではアルファベットのTを漢字の「丁」に見立てて50丁(ごじゅっちょう)と言ったりします)。

カタログでは、50-34Tや11-34Tといった具合に、一番重いギアと一番軽いギアの歯数で表記されます。大きい数字が先に書いてあるのがクランクの項目に記載されるチェーンリング(前ギア)の歯数構成で、トリプル(3枚)の場合は50-39-30Tのように3枚とも歯数を示します。一方、小さい数字が先にくるカセットスプロケット(後ギア)の場合は、最小と最大だけで中間ギアの歯数が省略されることもよくあります。細かく知りたい場合は、もうひと調べしないといけないこともありますが、全体を表すときには11-13-15-17-19-21-23-25-27-30-34Tのように、かなり長くなるので仕方がないですね。前述のドマーネSL6のギア構成はまさに、この例にあるフロントダブル(2枚)の50-34T、リア11速の11-34Tとなっております(何故だか、前は“〇〇マイ”、後ろは“XXソク”と数えるのが、“〇〇段”よりカッコいいらしい…完全に余談ですが)。

さあ、いよいよ本題に話を戻します。足の回転に対して、車輪の回転速度を変化させるのが、変速だという説明をしてきましたが、足の一回転に対し、車輪がどのくらい回転するのかを表しているのが、自転車におけるギア比です。通常は、(前ギアの歯数÷後ギアの歯数)で計算し、数字が大きい方が重いギア、少ない方は軽いギアということになります。

ドライブトレイン

足を一回転させた時に、車輪が何回転するのかを表すのがギア比

ギア比に関して多くの人が気にしているのは「もっと速く走りたいのに、ギアが軽すぎてそれ以上こぐことができない」という経験からくる一番重いギア比の問題と、「よく通る場所にある激坂で、足をつかずに登り切れるか」という一番軽いギア比の問題です。この両極端のギア比の幅のことをレンジと言います。

ギア比が何なのか、基本的な理解が深まったところで、段数との関係を見ていきましょう。

ギア比と段数の切っても切れない関係

せっかく買う自転車なら、速く走れて、どんな地形にも対応できる万能な自転車が欲しいですよね。そうすると、できるだけレンジの広い自転車が良いのではないかという気がしてきます。ところが実際には、どんなに重たいギアも、踏めなければ速度には結びつかないので、必要十分というものがありますし、軽い方も、自転車のバランスが取れないほどゆっくりになるようなギア比は使えないということになります。

そしてもうひとつ、考えなくてはいけないのが、隣り合うギア同士でギア比の変化が大きすぎると使いにくいということ。直感的な理解のために、下の絵を見てください。

多段変速のギア比を階段に喩えています。レンジの広さは階段の長さに相当し、階段が長ければ、より高いところまで登ることができます。普通の階段なら、長くなれば段数が増えるところですが、この階段は長くても短くても同じ段数しかついていません。このままだと4階以上の住人は困ってしまいます。

一段一段を少しずつ大きくして、なんとか4階までは登れるようになりましたが、最上階の住人が困ってしまう状況は変わりません。

一気に最上階まで行けるようにと、頑張って長くしたら、今度は一段一段が大きすぎて歩きにくくなってしまいました。これでは2階以上の住人全員がしんどい思いをすることになります。ギア比に話を戻すと、段数に対してレンジが広すぎる状態は、この階段のように一段の変化が大きくなって、辛くなってしまった状態です。階段の一段一段が大きすぎるのと、隣のギアまでのギア比が離れすぎているのはとてもよく似た状態になります。

では、ギア比の極端な変化を抑えながらレンジを広げるにはどうしたら良いでしょう?

ひとつは、段数を増やす方法です。いきなり前提条件を崩すようですが、普通の階段なら長くなると段数は増えますよね。ギア比の場合も同じで、レンジを無理なく広げるためには段数を増やすのが良い方法と言えます。まだ少し段差は大きめですが、1階から5階まで、一気に駆け上がったり駆け下りたりすることができて便利になりました。

実はこれ、MTBのハイエンドモデルで定番になっている1×12(ワン・バイ・トゥウェルブ)ドライブトレインのことなんです。前のギアが1枚、後ろが12速の構成となっているこのシステムは、上から下まで迷わず素早く行けるこの階段と同様に、何も考えずに直感的にギアを選べるので、路面の凹凸を全身で吸収しながら、ライン取りやスピードコントロールなど多くの判断を瞬時にこなさなければならないオフロード走行に最適なんです。地形とスピードの変化が秒単位で目まぐるしく変わるマウンテンバイクのライディングには、隣のギアとの差がちょっと大き目でも、素早く必要なギア比に移行できることが大きなメリットになります。チェーンのトラブルも抑えられますしね。

さあ、この階段が後ろギアの比喩だったことがすっかり理解できたところで、一旦、簡単にまとめておきます。

後ろギアを多段化すると…

  • 重たいギアまたは軽いギアを追加できる=より広範な地形の変化に対応できる(ワイドレンジ化)
  • 中間にギアを追加できる=隣りのギアとの歯数差を小さくできる=ちょうど良い重さが見つけやすい(クロスレシオ化)

では、他の方法も見てみましょう。上の例がヒントになったかもしれませんが、1段1段の大きさを抑えつつ、最上階まで階段をつなぐためには、階段そのものを増設する方法があります。

2本の階段を駆使して、まっすぐ駆け上がったり、ジグザグに階段を使い分けたりすることができて子供は喜びそうですね。大人は、1階から5階までの上りなら、まず4階まで一気に登ってから別階段で5階まで、下りは5階から2階までを一気に降りて、別階段で1階までといったルートに落ち着くと思います(ちょうど真ん中の3階で水平移動というのもありです)。

実はこれ、ロードバイクで一般的な、フロントダブルのシステムのことなんです。前のギアが2枚あることで、後ろのギアが2セット分使えるようになっています(同じ階段を、段違いで2セット持っているのと似たようなことになります)。効率的な変速機の使い方については後述しますが、実際の変速パターンも、階段の上り下りのルート選びと非常によく似ているんです。

ここまでくると、階段が3本あればさらに1段1段を小さくすることができて、足腰に優しいんじゃないかという気になりますよね。

ジャジャン!
…なんか階段がいっぱい…真ん中の階段、必要? まあ、狙い通り、足腰には優しそうな傾斜になりましたが…どう上り下りするのが良いか迷っちゃいそうですね。階段だらけで重さが建物に負担をかけそうな気もします。3×12の36段変速って物理的には可能ですが、やらない理由がこの辺にあります。ただ、フロントトリプルが生きてくる場面も、もちろんあります。それがこれ。

少ない段数の階段で最上階までつなぎたい場合で、かつ2階から4階を行き来する頻度が高い場合の階段レイアウトです(普通の建物なら、真ん中の階段は無くても良さそうなので、ちょっと強引に必要な理由を付けました)。真ん中の階段は、下の階段の上半分と、上の階段の下半分を足したものなので、機能としては完全に重複しています。実はフロントトリプルでも似たようなことが起きます。真ん中のギアが必要な理由は、常用するギア比が真ん中あたりに多いから、というのと、真ん中のギアがないと変速操作がものすごく大変だからというのがあります。詳しい説明は、後半の最後で触れていきますので、とりあえず一旦まとめましょう。

前ギアを多段化すると…

  • 隣同士は近いギア比のままレンジを広げることができる(クロスレシオのままワイドレンジ化できる)
  • 後ろギアの枚数が少なくても、無理なくワイドレンジ化できる
  • 重複するギア比が多く、ちょっと操作が煩雑で、重量は増えてしまいがち

次はいよいよ変速機の上手な使い方に進みます。

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