2023 Emonda ALR5 解体新書

2023年2月25日

新型Emonda 爆誕!!

エモンダALR5のフレームセット写真です

Emonda ALR5 54size / Azure to Living Coral Fade 瑠璃色から珊瑚色のグラデーションが目を引くカラー

新型ALRの発表があった日、僕は一瞬で心を奪われました。 "トレックはエモンダALRを作るために自転車を作ってきたのではないか" そう思ってしまうような仕上がりだったのです。私は惹き寄せられるがままに自分用バイクを注文をしていました。発表から数ヶ月、来る日も来る日も到着を待ち続けました。

皆様こんにちは、ごきげんようスタッフ樋口です。そんなバイクが手元に来ましたので、細部を一緒に見ていきましょう。初ロードの方も、2台目の方も、自転車オタクの方も。貴方もきっとエモンダが欲しくなりますよ。

お求めはこちらから!!

 

アルミフラッグシップ Emonda ALR

"アルミはカーボンバイクの下位互換"と考えている方も多いかと思います。本当にそうでしょうかこのカーボン全盛の時代にクロモリバイクがラインナップされているように、アルミという素材にも秀でる特性があります。カーボンに比べ比較的安価で軽く"アルミらしい"芯のあるパリッとした乗り心地は多くのサイクリストを虜にして来ました。トレックのアルミフレームはその長い歴史の中でブラッシュアップされサイクリストに愛されてきました。その中でもとりわけALRシリーズは別格。「R(acing)の称号を冠するだけあって「今のトレックがアルミニウムで出来ること」を全て注ぎ込んだアルミフラッグシップバイクになっています。

エモンダALR5のBB周りの写真です

最高峰のAlpha300 AluminiumはTREKの突き詰めた技術で強度と軽さを両立する

エモンダALR5のヘッドチューブ内の写真です

ヘッドチューブとダウンチューブの特徴的な接続箇所

 
エモンダSLR直系のDNA

今作はトレックフラッグシップである「エモンダSLRのジオメトリとビタイチで同じであることをはじめとし、ケーブルヘッド内装化/T47スレッドBB採用/Di2フレンドリー/H1.5FIT/KVF形状採用/...etc など盛りだくさんの要素が詰め込まれた至極のバイクです。細部を見ていきましょう。

エモンダSLR/SLと同一のジオメトリ

上位と同じポジションを作れるということは、エモンダの最上位であるSLRの設計思想にあやかれるということです。エモンダをエモンダたらしめる要素をより強く感じ取れる"アルミニウム"バイクという訳です。世界最大級のメーカーが最先端の開発環境で得たノウハウを"アル"に注ぎ込んでいるのはこのALRのみになります。この特別感たるや否や、ぼくらの所有欲を満たします。

エモンダALR5のジオメトリを示す写真です最高峰のレーシングバイクの兄弟機であることをひしひしと感じる


T47BB
採用

トレックがカーボンモデルを中心に採用をしているBB規格がALRにも採用となりました。PF30系のスレッド版とよく説明されますが、トレックが採用している寸法はBB386系のサイズになります。PF30系と同径ですが幅がクランクシャフト長いっぱいの86.5mm(正確には85.5mm)あります。軽く、強く、整備性よく自転車を作れる現状最強の規格(と僕は思っている)とあり安心して足元を任せられます。速く楽に遠くまで。スポーツバイクの命題を叶えてくれる要の構成部品です。

エモンダALR5のT47BBハンガーの写真です

大口径のT47スレッドは懐広く規格もパワーも受け止めてくれる

T47BBは互換性に優れており、様々な規格のクランクを使うことができます。シマノ24㎜シャフトからGXP/DUB/30㎜/ウルトラトルクなど多数の規格を取り付けられるため、スピンドル内蔵パワーメーターも導入することが可能です。

TREKサイズのT47はしっかり工具がかかるため整備性に長けます。脱圧入派の僕はニッコリです。安心していつまでも乗り続けることができますね。

ケーブル内装化

ケーブルが内装化することによるメリットはいくつか挙げられますが、個人的にはケーブルでフレームが擦れて傷つかないことは嬉しいですね。外装のケーブルはどうしてもフレームと擦れて傷がついてしまうものですが、内装ケーブルはその心配はいりません。ヘッドチューブ周りにケーブルが通らないため外観もかなりすっきりとします。

エモンダALR5のケーブル内装を示す写真です

ヘッドチューブへと内装されるケーブル類

内装の一番大きな目的は、結構昔のMadone(2013年ころ)で採用され話題をさらったKVF(kammtail virtual foil)形状を最大限に生かすためです。ケーブルを隠すことでエアロダイナミクスの効率を上げることにつながります。空気力学的観点において、ハンドル周りやフロントホイールなどはかなり重要視される点です。円柱の形状は空気抵抗が非常に大きいのですが、生憎ケーブル類はどれも円柱になっています。ケーブルを空力上一番気を使うべき前方から排除したい考えはなんとなくお分かりいただけるかと思います。これが内装化の主な理由です。「レースで早く走る訳じゃないからなぁ」とお客様からよく伺いますが、無駄な消耗を削減すべく作られたバイクは、サイクリングでもより快適に走れます。嘘だと思って一度試乗していただくか、僕を信じてお求め頂ければきっと直ぐ体感していただけますよ。

 

エモンダALR5のKVF形状を示す写真です

SLR譲りのKVF形状を採用しアルミで造形した狂気のダウンチューブ

エモンダALR5のKVF形状のフォークです

フォークはSLRベースの形状をとりつつもALR用に最適された形状をとる

 

Di2フレンドリー

これはもう声をあげてしまったくらい最高の要素です。今までのアルミハイエンドバイクはDi2にアップグレードしようとすると、ケーブルを内装できないといったジレンマがついて回るものでした。薄く強く自転車を作ろうとすると、ケーブル用の穴を配置するのが難しいことや「Di2まではアップグレードしないだろう」と内装仕様が用意されなかったケースもあったでしょう。
しかし時は令和
5年。105Di2の登場によってホビーライダーからシリアスレーサーまで誰もがDi2を運用する時代になりました。我らがトレック、黙っている訳がありません。エモンダALR2023年をもってDi2対応となったのです。

🔗 105 Di2 試乗車あります❗️ 

エモンダALR5のDi2ホールの写真です
エモンダALR5のDi2ホールの写真です

シートチューブとチェーンステーに電動用の穴が設けられている。どちらも専用のグロメットを使用する。シートチューブ側(W440697) チェーンステー側(W5286091)

 

内装化の副産物

この内装化、実はDi2ユーザー以外にもメリットがあります。フル内装になったことでシフトケーブルがフルアウターになっています。金属であるインナーケーブルが露出しないおかげで錆びにくくなったり、洗車がしやすくなったりと恩恵を受けられます。ブレーキホースもチェーンステーに内装化されたので、すっきりとした外観と清掃の利便性がより向上しました。keeperのコーティングを施行していれば、ある程度の汚れならササッと拭いて綺麗になります。フレームを拭きやすくてうれしいです。

🔗 キーパー コーティングが凄い❗️

 

BB裏について

ケーブルを最適なルートで通すため、シフトケーブルとブレーキホースを一部外通しする設計になっています。ここを内装設計にするとパイプを太くする必要があるため重量が嵩みます。それをしないのはエモンダ(語源:削ぎ落とす)らしい設計といえます。この3穴グロメットパーツ、以前はアルミ製でしたが今回は樹脂製のようです。ケーブルの抜き差しもしやすくなっており、アウターに傷がつかなくて済みます。僕はとても嬉しいです。

エモンダALR5のBB裏の写真です

ダウンチューブ側から露出するケーブル類はBBハンガーを通って各ステーに向かいます

エモンダALR5のBBシェル内を通るケーブルの写真です

他に例を見ない独創的な方法を採用しています

マニュアルをみると、ブレーキホースとDi2の配線も外通しするような指示がありました。緩くしか曲げられないシフトワイヤはわかりますが、細い電動ケーブルと(ある程度)曲げられる油圧ホースは内装しちゃいたいのが自転車オタクとしての気持ちです。

エモンダALR5のDi2ケーブルルートを示す写真です

本当に外装でなければいけないんでしょうか?私物で試してみます。

エモンダALR5のケーブルルートを可視化した写真です

向かって左がダウンチューブ。BBを締め切った状態でもエレクトリックワイヤに干渉はない

エモンダALR5のk-ブルルートを可視化した写真です

ダウンチューブ側のBB内開口はパイプの扁平さに比べ小さい丸型の為、ルートのゆとりは少ない

お、どうやらいけそうです。Di2ケーブルはルート上も全く影響がありませんでした。ホースは若干BBのスリーブを押し込みますが、許容と判断できるレベルでした。バイクサイズによってはキツさが変わるかもしれません。機械式でホースだけ内装するメリットは正直無いのですが、電動する際には全く問題がなさそうです。私物ALRは内装しておこうと思います(にっこり)。
繰り返しますがシフトケーブルは構造上中通し出来ませんし、この方法はマニュアルの組み方に反します。

 

新規格 RCSステム対応

完成車は一般的な規格のエリートステムが取り付けされています。RCSステムを装備することで、より一体感のある内装化が可能となっております。ドマーネ専用ステムとして先行リリースされていた本品は、シームレスで一体感を演出するコックピットパーツになります。専用の新型ブレンダーシステムが使える上、ハンドルクランプ幅も広くねじり剛性が向上。ポジションがある程度決まった状態で導入すると、ケーブルの露出をさらに減らしスマートなルックスへと変貌します。エモンダSLR/SLには取り付けができないため、これはALRのみに与えられた特権です。嬉しいですね。僕は嬉しいです。

ACRステムを装着した写真です


専用のヘッドパーツを採用することで一体感のあるステム周りとなる

ACRシステムのヘッドカバーの写真です

専用トップカバー(W5274267)とスプリットリング (W5274269) ケーブルのマネジメントに一役買っている。高さを上げるには追加で高さに応じたスペーサー(5296906/5296905)が必要


RCSヘッドの互換

熱心なトレックファンであればこう思った方もおられるのではないでしょうか。「これ、マドンの専用ハンドル使えるのでは?」と。僕もその一人です。

ACRヘッドカバーとマドンスペーサーの対比です


角度は合うというお預けを食らいました

結果としては"互換はないが斜度は合いそう"でした。スペーサーの突起が合わないうえに見た目も悪くなりますね。導入予定はありませんがちょっとワクワクしていました(笑)

重量

ここで全体の重量を細部に分けて観察していきましょう。重量だけでバイクの価値が決まる時代は終焉を迎えましたが、依然として重要なファクターであることに変わりはありません。

エモンダALR5のフレーム重量です


フレーム重量1205g 54サイズ (外せる小物はすべて外した状態)

エモンダALR5のフォーク重量です

フォーク重量408g 54サイズ (コラム未カット)

エモンダALR5の小物パーツの重量です


アクセサリ類 246g (内訳 : BB110g ヘッドベアリング上下49g スプリットリングとヘッドカバー23g ハンガーとボルト12g プレッシャーアンカー27g 3穴グロメット3g シートクランプ20g )

フレームセット重量

フレーム+フォーク=1613g フレーム小物を取り付けたセット重量=1749g(BB除く)
エアロバテッドフレームになってこの軽さは驚異的です。エモンダSLのフレームセット重量が大体1800g(樋口所有バイク 54サイズ)ですので、軽いバイクを作りたいのであれば寧ろ率先してALRを選ぶ選択肢も大アリになって来ました。末恐ろしい子です。

 

エモンダALR5の正面写真です

こんな人にお勧め

トレックのアルミフラッグシップバイクを手に入れ、乗り方に合わせて理想の構成に仕上げていく…

ビギナーから玄人まで、様々なユーザーを満足させるポテンシャルがあるバイクです。初めてのロードバイクに選ぶも良し。メイン機を張るも良し。優秀なサブバイクとしても良し。オーナーさんの数だけ大きく形を変えるバイクだと思います。一家に一台、いえ お一人1台エモンダをいかがでしょうか?

僕はまたエモンダ作業に戻ります。それではまた、気になるインプレ編で。